犬塚 篤(Atsushi INUZUKA, Ph.D.)
東京都出身.幼少期より物作りに興味をもつ.大手電子機器メーカーでの技術者勤務を経て,臨床心理のプロを目指すが大学院入学に挫折.以後,人間と組織の関係に焦点を絞り,経営学の分野へと進む.人間(心理),社会(経営),システム(工学)のわかる研究者として,ナレッジマネジメント(知識経営)に関する実証調査研究を数多く手掛ける.トリプル・メジャー(3分野専攻)のバックグラウンドを活かした学際的な研究アプローチ,および研究成果の事業化活動などにおいて,学術界・実務界からの注目を集める.2004年,北陸先端科学技術大学院大学より博士号を取得.同大学助手,助教を経て,2008年より,東京大学特任准教授.
●専門領域
知識経営(ナレッジマネジメント),経営組織論,組織心理学(経営行動学),知的財産管理
ミクロ組織論,なかでも実証データをもとにした数理的解釈を得意とし,組織現象のメカニズムやそれに伴う組織行動の変容等を,計量的に解明(表現)することに強い関心をもっています.特に,個人や組織,あるいは技術間の「関係性」に焦点を当てた研究がその大半を占めており,知識の共有や移転,異組織・技術間の統合や連携等に関わる理論的問題を,数量化技法やネットワーク技法等の統計的・工学的アプローチによって明らかにしようとしています.
メインキーワード:関係性
その他のキーワード:ネットワーク,コミュニケーション,知識共有,知識移転,知識獲得,認知構造,技術経営,知的財産,特許情報分析,特許発明者分析,メディア,営業知識,状況的知識,エージェント・シミュレーション
●主要研究テーマ
(1)異組織・技術間の統合や連携に関する研究(やや技術経営・知的財産管理寄り)
本研究領域では,異組織同士がいかに知識や技術の統合を果たしているかに関する実証的考察を行っている.組織内における異なった制御メカニズムに関する実証的研究,および特許情報をもとにイノベーション・マネジメントを考える特許情報分析の2つの柱がある.後者は,国内では数少ない知的財産マネジメント分野における定量的研究であり,異技術度や新結合等の評価指標を開発し,技術間の摩擦や活用に関する実証的考察を行っている.
◇代表論文
犬塚篤「情報の多義性削減プロセスに関する実証的解釈」『組織科学』 Vol.38, No.4, 2005, pp.66-76.
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犬塚篤「フランチャイズ組織における目標統合:加盟店店長の非経済的側面に着目して」『日本経営学会誌』Vol.17, 2006, pp.29-38.
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Atsushi Inuzuka, "Do corporate mergers bring about new combinations of knowledge?: Empirical evidence from patent data," International Journal of Knowledge Management Studies, Vol.3, Nos.1/2, 2009, pp.40-59.
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(2)ネットワーク分析による組織現象の解明(やや工学・社会学寄り)
本研究領域は,社会学から派生した社会ネットワーク分析の組織論分野への応用を図るものである.「関係性」は組織設計の基礎であるが,社会ネットワーク分析は,個人や組織の行動・特性の総和からでは明らかにならない組織現象の解明に役立つと考えられ,知識経営を考える上で大きな可能性を秘めている.さらに,知識はそれを構成する要素からなる複雑なネットワーク構造と解することができることから,これらを応用した知識共有の評価モデルの開発にも取り組んでいる.
◇代表論文
犬塚篤「3層知識ネットワークデータを用いた知識変換の影響力の定量化:ゲートキーパー・トランスフォーマー機能の再検討」『組織科学』(採録決定)
犬塚篤「組織内ネットワークの構築と知識共有」『人工知能学会誌(知識継承特集号)』Vol.22, No.4, 2007, pp.472-479.
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犬塚篤「特許発明者に着目したNIH症候群の再解釈:研究開発における”関係維持”がもたらす効果」『日本経営学会誌』(採録決定)
(3)知識の共有・移転,知識の獲得メカニズムに関する研究(やや心理学寄り)
団塊の世代が大量に退職を迎えるという2007年問題が現実となる現代において,知識の共有・移転の問題は看過できない問題となっている.本研究領域では,知識の共有を考えるに必要な概念の定量化や効果測定を行ったほか,知識とはそれを認知する個人の主観の投影と考えられることから,個人がもつ認知の差異が知識共有や移転に与える影響に関する基礎的研究を行っている.また最近では,販売員が現場の状況に合わせて使い分ける能力(状況的知識)の有効性に関する研究を進めている.
◇代表論文
犬塚篤・鱸裕子「フランチャイズ本部から店舗へのメッセージ伝達:メッセージ理解と店舗内人間関係」『経営行動科学』Vol.20, No.2, 2007, pp.1-11.(2008年度経営行動科学学会・研究奨励賞受賞)
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犬塚篤「顧客ニーズの共有コストに関する一考察:情報粘着性の観点から」『日本経営学会誌』Vol.14, 2005, pp.43-54.
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犬塚篤「職場内訓練の成立条件:ソシオメトリック・データを用いた実証」『産業・組織心理学研究』Vol.22, No.2. 2009, pp.115-126.
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★他にもたくさん論文を書いています(研究業績リスト[PDF]).
●Brief Career
1991-1996 ソニー株式会社 勤務
2003-2004 知識綜合研究所 所長
2004- 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) 知識科学研究科 組織ダイナミックス論講座助手
2007- 同助教
2008- 東京大学 総括プロジェクト機構 知的資産経営総括寄付講座 特任准教授(常勤)
兼 東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 非常勤講師
兼 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科MOTコース 非常勤講師
●Qualifications
1991 学士(工学)
1995 学士(教養学)
1997 産業カウンセラー(厚生労働省認定)
1998 第1種情報処理技術者(経済産業省認定)
1999 学士(経営情報学)
2001 修士(知識科学)
2004 博士(知識科学)
●Daily Life
研究漬け,珈琲漬けの毎日.
昔は,読書,音楽やオーディオなどの趣味があったが,最近はすっかり研究の虫.
休日に,PCを持って,街の喫茶店を”はしご”する習性あり.ちなみに,独身(未婚).
学問遍歴の途
- 技術者として,人間として
- 人も羨む?一流企業を5年勤め,退職した.技術者としての自分と,一人の人間としての生き方の一致が取れなくなったからだ.会社員なら誰もが一度は考えることだろうが,私の場合は人一倍そうした思いが強かったのかもしれない.
- 臨床心理学の限界を知る
- どうせなら一番苦しんでいる人のために働きたいと,「人間中心」の思想をもつ臨床心理学に自分の生き方の昇華を求めた.しかしそれは,現実の社会から遊離された空間を前提として成り立っている学問でしかなかった.私の目的は次第に,「現実の社会における人間中心」の思想の在り処を探ることへと収斂していく.
- 経営学からJAIST入学へ
- 社会における現実を学ぶため経営学を志し(3度目の大学入学),産業の諸条件とダイナミクスを理解するうち,野中郁次郎先生の「知識創造」という観点が,人間中心の思想と企業の収益性との二律背反を克服するひとつの切り口になると考え,JAIST入学を決意する.
- ナレッジ・マネジメント最前線
- 希望通り,野中郁次郎先生に師事.ナレッジ・マネジメントの最前線で研究するうち,具体的方法論の欠如を痛感.ちょうどその頃,経営の記述言語としてのシステム思考に出会い,研究テーマを大幅に変更.シミュレーション技法を用いた研究で修士論文を書きあげる.優秀修了者として表彰されました.
- 横断的な研究活動を展開
- システム論的分析手法に組織研究の活路を求め博士後期課程へ進学.究極の目標は,経営における意味の流れのシステム論的記述.社会を意味ある形で記述するためには,文系・理系両方のセンスが必要.文理双方のバックグラウンドを活かし,横断的な研究活動を始めていきました.
- 人を支える知識を求めて
- ベンチャービジネスラボラトリ(VBL)の入居審査を経て「知識綜合研究所」を創設,所長に就任.ナレッジマネジメントの観点から,実務はもとより,学術研究としても有用な調査分析手法の開発,コンサルティング活動へと乗り出していきました(教員着任に伴い,活動を中止しました).
- 新たな理論構築を目指して
- 大学教員に着任.学術資産の応用展開を志し,企業における具体的な問題解決手法の構築に数多く関わる.特に,個人や組織の認知構造に関する実証調査手法に興味をもつ.また近年は,知的財産管理,技術経営などの研究にも関わっている.
−現場・技術・理論のわかる研究者として,学問と実務のリエゾン役をめざしています−